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書籍紹介 森のようちえん−自然のなかで子育てを(今村光章 編著)
JUGEMテーマ:手造りおもちゃ


私が日本での「森の幼稚園」の存在を知ったのは、浜田久美子著 森の力という本を通して。

高校生が農林業等に長年携わってこられた古老とともに仕事しながら体験を聞き出す「聞き書き甲子園」、森の癒しを地域活性化に結び付けようとする「森林セラピー」の試み等を紹介したこの本の中に、保護者も交えた自主運営により森での野外活動のみを活動内容とする「森の幼稚園」を紹介する章があり、保育の様子や日本に導入されるまでの歴史的経緯等が紹介されていました。


幼児保育までだんだん知育偏向が進む現状を見るにつけ、受け身の経験に終始しがちな今の子ども達の経験不足にますます拍車がかかるのでは、との懸念を抱いていたのに加え、自然と触れ合う機会が少ない事が「キレやすい」などと謂われている精神面での不安定さに影響しているのでないかとも感じていたので、「森の力」に書かれていた内容から、もう少し活動状況の詳細を知りたいと思って探したのが、今回ご紹介する 今村光章 編著の 森のようちえん−自然のなかで子育てを(解放出版社 発行)です。

森のようちえんは、自主保育として原則、園舎も園庭ももたず一年中の活動を森の中で行う「通年型」、既存の幼稚園や認可型保育園が活動の一部として森のようちえん活動を取り入れている「融合型」、任意団体がイベント等の形を取って実施する「行事型」の3つのタイプがありますが、本書では、編著者今村光章さんが、岐阜県内で実際ご自分で行事型の森のようちえんを始められた際の経験談を導入にして、各地の森のようちえんを運営者してみえる方や運営に参加した事のある体験者の手による(一部、コラム形式も交えた)各地の活動の紹介、森のようちえんの保育理念(いわば理論編)、発祥の地であるヨーロッパから、やはり実際に運営に参加された方によるドイツの森のようちえんの活動の様子の紹介の4つの章で、森のようちえんの活動にいろいろな方面から光を当てるような構成になっています。

第1章、第2章の体験記的な部分では、多少それぞれの著者の思い入れが強く出過ぎた面が目に付きますが、日頃、決まった枠内で事前のお約束に従って秩序を守る事を優先した保育での子ども達の様子とを見慣れている眼には、事前に決まったシナリオを準備する事のできない森の中の活動で、道々出会う様々なものに対して臨機応変に反応して見せる子ども達の姿が劇的に異なって見える事の裏返しかと、好意的に読み取りました。

第3章の理論編でも、ある程度子どもの活動を引き出すような仕掛けは準備するものの、ムシと出会ったり、雨が降りだしたり、といった様々なハプニングに対して示す子どもの自発的な活動を、基本保育者が見守る姿勢に徹する事で、子どもの生まれつき備えた能力が自然な形で引き出される事を森のようちえんの意義として挙げています。

そして、森林セラピーの例を見て分かる通り、森そのものが人間の精神に与える影響力(森の力とでも言うべきもの)ももちろん大きいものがあります。感受性の柔らかな子どもにとってはなおさら。

緑に囲まれた広い場所で、立ち入りを制限されるような場所もなく、コマ切れの時間の制約もなく、例えば周りの友達の危険を考えて狭い園舎の中では制限される棒きれを振り回すような遊びも、離れた場所で行えば好きなだけ振り回す事ができます。

そうした開放的な場所で活動する事で、園舎での活動では問題となる子ども同士のぶつかり合いなども他の遊びの要素と出会う事で自然に収まり、これは「森の力」でも驚きをもって取り上げられていますが、急な山道に分け入った際などに自然な形で子ども同士が助け合うようになると指摘しています。

これは、動物性を呼び覚ます作用がある半面、精神的な安定をもたらす森の中で、存分に「遊びこんだ充足感」に満たされる事で、自然他を思いやる気持ちが芽生える、人間の心の不思議な動き。人は十分自分の欲求を満たした後初めて他人の喜ぶ顔を見て喜びを感じるようになる、という事は様々な児童心理の本でも指摘されています。

ドイツの森のようちえんの活動でうらやましかったのは、幼児が日常遊びに使用するものとして、森に落ちていた木切れや石ころに加えて、ノコギリ、ナイフ、金づち等が挙げられていた事。

先日、たまたま引き受けた子ども会主催のクリスマス会で、折り染めとそれを使用して万華鏡を作ったけれど、事前の打ち合わせの際、万華鏡に使用するガラスについて「割れると危ない」と一部の母親から指摘があり、「ガラスを使わない市販のキットを使用しては」という提案があり、「手近な材料を使って手造り」というこちらの基本線に合わないので「なるべく危険の少ない手順を考える」からと言う事で押し切って、結果的に手作り感一杯の万華鏡ができて、納得してもらえたのだけれど、幼稚園の日常活動でノコギリ、ナイフなどを使わせるのは日本の現状ではかなり抵抗が大きそう。

ノコギリ、ナイフなどを幼児に扱わせれば、当然リスクはあるのだけれど、反面、リスクを身の周りから遠ざけたまま成長してしまう事にも、それはそれで危険に対処する能力が育たないというリスクが。

不用意に振り回したり、その辺に放置したりすればまだしも、通常の使い方でノコギリやナイフを使う分には、多少の切り傷等はあっても、元々力の弱い幼児なら指を切り落としてしまったりと言うような重大な事故が起きる可能性はほとんどないと考えていいと思います。

ちょっと例は違いますが、たまに山の上のスキー場を街中の遊園地と同様な感覚で安易にコースから離れてしまい、道に迷って遭難した、なんてニュースを聞いたりすると、リスクを遠ざけ過ぎた副作用のようにも思えるんですが。

保護者自らもなんらかの役割を求められる例が多く、本書を読んで気に入っても、実際に利用できる家庭は限られるかもしれませんが、休日の家族の過ごし方などでその精神、考え方等参考にできる部分は多々あるように思いますので、興味のある方はご一読をお勧めします。


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author:Uncle K, category:書籍紹介, 22:37
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